南九州の外城の町並み、麓の町並みの記録です。
蒲生





蒲生(かもう)は鹿児島県のほぼ中央に位置し,日本一の大クスの町,また,武家屋敷の残る町として知られます。蒲生麓は,地頭仮屋を中心に前郷川と別府川の間に計画的に整備され,当時の町割りがほぼそのままの形で残る数少ない麓の一つです。多くの武家門が残る点も蒲生麓の特徴と言えます。

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新辻馬場の町並み

蒲生麓は8つの馬場と3つの小路からなり,特に新辻馬場と西馬場に麓の景観がよく残ります。蒲生は中世から蒲生氏の治める領地でしたが,島津氏の直轄領となってから,地頭仮屋を中心に現在の地に整備されました。
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新辻馬場の武家門
新辻馬場は玉石垣と生垣が続き,麓らしい見事な景観が見られます。

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新辻馬場の武家門
明治中期築。上の屋敷は武家屋敷カフェに生まれ変わりました。6月は生垣がみずみずしい。

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新辻馬場の町並み(2008年)
蒲生麓は腕木門が多い。新辻馬場はそぞろ歩きしたい場所。麓らしい風情を味わえる。

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蒲生八幡神社(左)と蒲生小学校(右)
蒲生八幡神社は,宇佐八幡宮の神官・藤原清教の子・藤原舜清が大隅国・垂水に下向し(1120),次いで蒲生院に入部し(1123),宇佐八幡宮を勧進して創建しました。以後,藤原舜清とその子孫は蒲生氏を称し,約430年当地を支配しました。古い町割図では参道の両側に社家があったことが分かります。

大隅合戦に敗れた蒲生氏に代わり,島津義弘が部下88人を蒲生に居住させます。当初の地頭仮屋は蒲生城と前郷川の間に置かれましたが,その後地頭仮屋を前郷川の北に移転し,江戸中期の享保の頃(1716〜35)に現在の地に麓が作られました。

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八幡馬場の町並み
八幡馬場は蒲生八幡神社から蒲生城(山城)を目標に南北に延びる。幅員拡張で麓らしい景観が所々失われているが,それでも馬場沿いに石垣や御仮屋門,明治期の武家門など貴重な遺構が残っています。

蒲生_ 八幡馬場の武家門(2008年)
明治39年築。板壁・引戸・潜戸付き。神社近く。

蒲生_ 八幡馬場の武家門(2010年)
板壁・引戸。神社近く。写真の古い瓦はその後葺き替えられました。

蒲生麓では石高に応じて門の形が定められています。藩政時代,蒲生麓で武家門が許されたのは10石以上。10〜49石までは屋根一つで引き戸。50石以上は小屋根が付き,菱形金具の観音扉となり,不浄門を設ける。100石以上は扉に乳鋲打ちが許されました。

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八幡馬場の武家門
明治初年築。蒲生殖産興業。蒲生士族共有社の門が残る。御仮屋門と同じ小屋根付きで観音扉は乳鋲打ち。
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御仮屋門
文政9年(1826)年再建。旧蒲生町役場に残る。高さ5.4メートル・幅6.1メートル。クスノキが使用され,反り屋根の両脇に小屋根が付く。乳鋲打ちの観音扉で不浄門を脇に備える。

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八幡馬場の武家門(2012年)
明治39年築。2008年当時屋根瓦の傷みが心配されたがその後瓦が新調されました。

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八幡馬場の町並み

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八幡馬場の町並み
御仮屋門と並び,現在は消失したが二棟の武家門が並んでいた。石垣跡に面影が残る。八幡馬場から上馬場を過ぎ,くすくす館の角を曲がると下馬場通りが東西に延びる。

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下馬場通り
下馬場通りは東西に1km延びる幹線道路で,八幡馬場と同じく幅員が拡張されている。そぞろ歩くには交通量が多いが,通りに沿って石垣や生垣が続き,多くの武家門が並んでいる。
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「歩いてみませんか?日本一の大クスと武家門の町」のキャッチフレーズ

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有村家武家門(2010年)
文化13年(1816)築。下馬場通り。御仮屋門と並び蒲生麓を代表する門。蒲生麓に現存する門で最も古い。
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有村家武家門
反り屋根・控え柱付き腕木門。観音扉は100石以上に許された乳鋲付き。右に不浄門を備える。
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下馬場通りの武家門
左は江戸末期築。右は大正期築。

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質屋小路の町並み
質屋小路は上馬場と下馬場を南北につなぐ。左右に切石の石垣と生垣が見られます。
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上馬場の町並み
上馬場は八幡馬場から前郷川と別府川の間を東西に延びる。左の古い洋館は現在(2020)見られず。右の武家門は明治中期築。
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辻馬場の武家門
今にも崩れそうな門だが江戸末期・慶応年間の建立。
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辻馬場の武家門
左は大正初期。右は明治10年築。辻馬場は南北に延びる。
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後田馬場の町並み
後田馬場は南北に走り,玉石垣と竹垣が残っている。

武家門の築年は下の参考文献(*1)を参照した。

訪 問:2008年6月13日(2010.2, 2012.5,2014.6))
備 考:蒲生観光交流センター/西馬場(別途取上予定)
参 考:蒲生郷土史/「蒲生麓における武家門の保全状況」(鹿児島大学工学部建築学科・境野健太郎他)(*1)等

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